生成AIをPCで動かすためにはPythonのインストールが必要です。しかし、Pythonといってもインストール方法が4通りもあるため、どれを選べばよいのか迷いますよね。
そこで、今回はそれぞれについての特徴と生成AIを動かすために最も簡単なインストール方法について紹介します。
本記事には4つのPythonのインストール方法へのリンクもまとめていますので、併せてご利用ください。
Pythonインストール方法ごとの特徴
4つのインストール方法について特徴の概要をまとめました。Anaconda以外は個人利用、商用利用ともに無料で使えますが、Anacondaについては商用利用の場合のみ有償となります。
種類 | 特徴 |
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Python公式 | 必要なものだけ選りすぐったコンパクトなPython環境を作りたい人向け Python公式サイトで公開されているインストーラを使ってインストールする。 Pythonの最新版を使いたい場合はこれ一択。 Pythonインタプリタと対話型実行環境(Python Prompt)のみであるため、必要なライブラリ は自分で個別にインストールする必要がある。 仮想環境は用意されているが、Pythonのバージョンはインストール時のバージョンに固定。 |
Anaconda | すぐにPythonでデータ分析や機械学習を始めたい人向け Anaconda社が提供するデータサイエンス/機械学習向けのディストリビューション(※)。 Anaconda公式サイトで公開されているインストーラを使ってインストールする。 深層学習や機械学習のライブラリと開発ツールが同梱されており、すぐに始めることが可能。 多数のライブラリと開発ツールが含まれるため、最低でも5GBのディスク容量を消費する。 原則有料であるが、個人使用や教育用途では無料で使える。 協力なパッケージ管理&仮想環境ツール(Conda)が用意されており、特に仮想環境は Pythonの複数バージョンを使い分けられる優れもの。 |
Miniconda | コンパクトなPython環境、かつ複数のPythonバージョンを使い分けしたい人向け Anaconda社が提供する軽量版(約500MB)のディストリビューション。 Anaconda公式サイトで公開されているインストーラを使ってインストールする。 Pythonインタプリタと対話型実行環境(miniconda Prompt)のみであるため、必要なライブラ リは自分で個別にインストールする必要がある。 誰でも無料で利用できる。 Anacondaと同じパッケージ管理&仮想環境ツール(Conda)が使える。 |
WinPython | 自分のPC環境を汚すことなく、手軽に複数のPythonバージョンを使い分けたい人向け WinPython公式サイトからZipファイルをダウンロード&解凍するだけでインストールできる。 USBに入れてPython環境を持ち運びして使える。 インストールしたPython環境はそれぞれ独立しており、複数バージョンの併用が可能。 フォルダ丸ごとコピーすることで、環境の複製やバックアップが用意。 データサイエンス/機械学習向けのWinPythonと軽量版のWinPythonが配布されている。 |
(※)ディストリビューションとは、それ単独では実用的でない基盤製品に対して、実用化するために必要なオプションを同梱(パッケージング)して配布する配布形態のこと。Anacondaの場合、Pythonインタプリタに加えて数値計算や機械学習、可視化などのライブラリと複数の開発ツールをパッケージングしている。
4つのPython のインストール方法
それぞれのインストール方法については、下記の記事にスクリーンショット付きで詳しく解説しています。
Python公式 | 【最初の一歩】Pythonの簡単インストール手順(スクリーンショットで解説) |
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Anaconda | 【最初の一歩】Anacondaの簡単インストール手順(スクリーンショットで解説) |
Miniconda | 【最初の一歩】Minicondaの簡単インストール手順(スクリーンショットで解説) |
WinPython | 【最初の一歩】WinPythonの簡単インストール手順(スクリーンショットで解説) |
生成AI環境に最適なインストール方法
何が正解というわけではありませんが、複数の生成AIをいくつもインストールしたい場合は Python公式とGitをインストールがお勧めです。一度インストールしておけば後は気にしなくてよいので、手間が多少なりとも省けます。
ただし、インストールに伴い環境変数への登録や意図しないフォルダ(Program Files以外)へのファイル展開が行われることがあり、多少なりとも自分のPC環境に影響を及ぼすかもしれません。
自分PC環境を汚したくない場合や、面倒なインストールは嫌だという場合は、WinPythonの軽量版とポータブル Git を使うのがお勧めです。どちらも指定したフォルダに展開するだけなので、不要になったらゴミ箱にドラッグするだけで削除できます。
多くの生成AIは、インストール時に必要なライブラリを自動でダウンロード&インストールするようになっているため、Anacondaのような機械学習系のライブラリは必要ありません(あっても利用されません)。
Python公式の代わりにMinicondaをインストールする方法もありますが、 Python公式とMiniconda とでは仮想環境のコマンドが異なっており、多くの生成AIは Python公式のコマンドを利用しているので、うまくいかない可能性が高くなります。
簡易版・生成AI動作環境の作り方(WinPython軽量版+ポータブル Git)
この章では、WinPython軽量版とポータブル Gitを使って、インストール不要の生成AI動作環境を作る手順をご紹介します。
次の Step1~Step5の手順を実行するだけで、WinPytyon軽量版とポータブルGitを1つのフォルダにまとめることができます。
この方法で一旦環境を作っておけば、あとは動かしたい生成AIの数だけフォルダコピーすることで、独立したPython環境を何個でも増やすことができます。
まず最初に、WinPythonをダウンロードします。生成AIによって必要なPythonバージョンが異なるのでご注意ください。尚、ダウンロードするのは軽量版(ファイル名末尾に dot が付いているもの)です。
例えば、バージョン 3.10 を使いたい場合は WinPython64-3.10.11.1dot.exe をダウンロードします。
尚、古いバージョンのWinPython(3.6など)では、ファイル名末尾が dot のファイルが存在しない場合がありますので、その時はサイズが一番小さなものをダウンロードして下さい。
https://sourceforge.net/projects/winpython/
次に、Gitの公式サイトからGti for Windows Portable をダウンロードしてください。これは最新バージョンで構いません。
https://git-scm.com/download/win
ダウンロードした2つのファイルを任意の場所に解凍し、解凍後のフォルダ直下
(下記の例では WPy64-310111)に PortableGitを丸ごとコピー(または移動)します。
次の内容をテキストエディタに張り付けて、command.bat という名前で保存してください。
@echo off
CD scripts
call env_for_icons.bat %*
SET PATH=%PATH%;%WINPYDIRBASE%\PortableGit;%WINPYDIRBASE%\PortableGit\bin
cd ..
cmd.exe /k
作成したバッチファイルをWinPython解凍後のフォルダ直下(下記の例では WPy64-310111)にコピーまたは移動します。
簡易版・生成AI動作環境の使い方(WinPython軽量版+ポータブル Git )
先ほど作成した生成AI動作環境のフォルダはテンプレートなので、インストールしたい場所に丸ごとコピーして、生成AIにちなんだ名前に変更しておくことをお勧めします。
生成AIのインストール時
クスプローラーで生成AI動作環境フォルダ(下記の例では Wpy64-310111)にある command.bat をダブルクリックで実行します。
コマンドプロンプトが表示されますが、これはPythonとGitが使える状態になっていますので、ここから生成AIごとに用意されたインストールコマンドを実行していきます。
多くの生成AIのインストールにおいては、ここでGitコマンドを実行します。
例えば Roop という生成AIをインストールする場合、git clone https://github.com/Hillobar/Rope というコマンドを実行しますが、その結果Ropeといフォルダが生成されます。
多くの生成AIは、Git Cloneコマンドによって作られたフォルダ(上記の場合は Rope)にカレントディレクトリを移動して、続きのコマンドをいくつか実行し、最終的にインストールを完了させます。
生成AIの実行時
生成AIを実行する場合は、インストールと同じ手順で command.bat を実行し、表示された故マントプロンプトから、生成AIごとに決められたコマンドを実行します。
例えばRope の場合は cd rope でカレントディレクトリを移動し、rope.bat を実行することで起動できます。
まとめ
Pythonと一言で言っても、Python公式、Anaconda、Miniconda、WinPythonの4つの種類があります。
多くの生成AIは、他の生成AIの動作の邪魔にならないよう、もしくは他の生成AIの影響を受けないよう、Pythonの仮想環境の配下でインストールを行うようになっています。
その時に使われている仮想環境の管理コマンドは Python公式のもの(Venv)を使うケースが多く、AnacondaやMinicondaよりも、Python公式、もしくはWinPythonの方が相性が良いと言えます。
また、GitやPythonをインストールするのが面倒な場合は、WinPythonとポータブルGitを使った環境構築が一番簡単なので、その具体的な手順についても紹介しました。
どの方法を使うかはご自身のPC環境によって変わってきますので、本記事を参考に最も良い方法をお選びください。
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